上品な生まれ

娘が着ていたベビー服。もう何年も前のことだが、こんなに小さかったかと驚く。

娘が生まれたとき、体重が標準の半分ほどだった。赤ん坊が小さいため予定よりさっさと産んでしまったので身内は間に合なかった。かろうじて夫は産声と同時に到着したが。
その後実家の母と叔母がかけつけた時、病室の外で女医さんが「上品な赤ちゃんですよ」と説明したと聞いた。
なるほど上品とはうまいこと言う。「ちょっと小さめですが」とか「元気ですが標準より云々」と言われると、人によっては不安になるだろう。上品なんだから仕方がない。納得した。

そんなわけで娘は着る服がないのは明らかだった。
腕に覚えのある母が俄然張り切って次々とベビー服を量産していった。
かくして娘はちょっとないくらい衣装持ちになった。小さくも産んでみるものだ。
実際、娘が立とうか、歩こうかというときに既製の新生児サイズがぐすぐすだった。

話を戻すと、私が入院したのは個人病院だったので出産後娘は即、救急車で「未熟児センター」施設を持つ病院へ送られた。
一人残された私は暇な入院生活を送ることになった。ここでは皆が私に優しい。なにせ、「子供を抱けない哀れな母親」なので看護婦さんや他の入院患者さんが気を遣ってくれる。「かわいそうに」オーラが発せられているのだ。
しかし実際、これはとても楽だった。だいたいそんな小さな赤ん坊を素人の私に渡されても自信がない。ところが病院だとどうだ。未熟児専門の先生やら看護婦さんやらが入れ替わり立ち替わり２４時間看護してくれるのだ。こんなに安心なことはない。
昼間は見舞いに来てくれた友人らと「え〜！うちの家で焼き肉するときに２キロの肉を買うから、それより小さいとなるとこれくらいか？」などとお気楽な話をし、夜中はぐっすり眠らせてもらえた。上品な娘のおかげでゆったりとした時間を過ごすことができた。